7月24-29にヨーロッパでもっともディベータブル?な国の一つ、オランダで開催されたworkshop、DAPDIについて報告します。
オーストラル後にオランダで行われたワークショップ、DAPDI(Dutch Anglo-Saxons Parliamentary Debate Institute)に「Dutch でもAnglo-Saxonsでもない自分が参加していいのだろうか?」とメールをしたら、コーディネーターから快い返事がきたので、じゃあ行こう!ということで参加してきました。
今回参加に踏み切った理由は大きく分けて2つ、1つはESLの強豪であるオランダがどのような練習をしたり、ワークショップなどの環境を整え、維持したりしているのかを自分の目で確かめたかったことです。自分の大きな目標の一つであるワールドESLブレイクに少しでも近づくために自分は何をしなければならないのか確かめたかったですからね。もう1つは純粋に海外をどこか一人旅がしたかった笑
成田空港からチューリヒ経由で12時間ものフライトでオランダ・スキポール空港に到着…
到着したその日は半日ロッテルダムを観光しました。町並みがホント綺麗です。はじめトラム(路面電車)の乗り方が全くわからずおばあちゃんに教えてもらいました笑
次の日からワークショップが始まります。レジを済ませてORへ。周りはオランダ以外にドイツ、ロシア、エストニア、ベラルーシ等ヨーロッパやモロッコ、南アフリカ等アフリカからはるばる来ている人もいました。コーチ陣は今年は例年よりも数が多いとのこと、オックスフォード、ケンブリッジから5人ものコーチが来ていました。その中にはEUDC 2010 FinalistのTom Hosking、Harish Natarajanなど普段動画で見ているようなワールドクラスのディベーターもいました。自分はオックスフォードの別のディベーターのlabだったのですが、TomやHarishからもレクチャーを受けたり、ディベート後のフィードバックをもらったりすることができました。
1−3日目までは午前中に軽いレクチャーとスピーチ練習、午後からはラウンドという感じでした。Lab mateをみるとほとんどがオランダ人だったのですが、大学生だけではありません。8月のWSDCにオランダ代表として出場する高校生もいました。練習ラウンドではまさかの高校生に敗北…(あとで調べてみたらWSDCでオランダ代表は予選全勝、3位ブレイクしていました。そりゃ強いわけだ笑)
3日目の最後にはデモディベートがありました。このワークショップのデモディベートで他のワークショップのそれと異なる点はコーチがモデルを示すのではなく、コーチVS生徒となっているところです。Gov benchがOxbridge benchになっていて、Opp benchにはエストニアのチーム、LeidenとGutenberg のジョイントチームがいました。モーションは THW ban prostitution、このモーションがディベータブルなのがオランダらしいですね笑
4・5日目はミニ大会です。もともとこのワークショップがEUDC前の調整としての意味合いも持っているらしく、多くのチームがEUDCに出るチームで大会に臨んできます。中にはオランダのLeiden大学、ドイツのGutenberg大学などEUDC のESLでブレイクするレベルの大学、しかもGutenbergはAチームが来ていました。自分はというと一人で参加しているので当然パートナーはいません。現地調達をする必要がありました。自分はlab mateパートナーにしたのですが…ジャッジには「No matter, no structure…nothing」と言われる始末…とりあえず一人で頑張ることになりました笑
結果は二位二回、四位二回でした。とりあえずエクステンションとファーストスピーチをきっちりやれば二位は取れました。ブレイクはならなかったのでブレイクラウンドを観戦することに。結果はオランダ人のジョイントチームが優勝しました。WSDCチームも準決勝まで言ったのを見ると、オランダが強いのは高校からやっているからなのかー、とちょっと諦めの入った結論に至りそうになっていました。
今回参加して、なぜオランダがESLであれだけ活躍できるのか、を考えたときに言語の問題など結構仕方がないものもあれば、個人の努力、組織の運営の上では埋められる差も結構感じられました。
まず仕方のない要素から話すと、オランダ語は英語と文法が大してかわらないので、日本語で言う方言を覚えるように英語は比較的に簡単に習得できるそうです。だからオランダでは英語教育は日本と同じように中学校から始まりますが、町や空港を歩いていて英語で道を尋ねてもほとんどの人が英語を話せます。これについてはどうしようもないです。それだけ英語を話すのに無理がないのであればディベートの敷居も比較的低そうですね。あとは地理的にイギリスが近いこともあり、ディベートを導入しやすかったことも関係していそうです。
ただ、敷居が低いこととディベートを高い水準に維持することは必ずしも一致しないように思います。例えばこのワークショップ。20年も前からオックスフォードをはじめとしたディベート強豪校のコーチを招いて、毎年開催しているそうです。それについては組織の運営を工夫すれば差は埋められそうです。日本でもJPDUのセミナーや今年開いた国際大会セミナーなど日本も徐々に国際化しています。もう一つ埋められる差は知識の量です。彼らは休み時間でもジャーナルを読んでいましたし、リサーチも相当量、しかも定期的にやっているようでした。個人の努力を、しかも多くの人がそれをすることによって、知識量のある人同士が競争して切磋琢磨できそうですね。
よく日本の大学のESSとかで聞かれるのが「人がいないから練習ができない」というのがあります。Leidenのディベーターと話したのですが、オランダでディベートをやっているのは高々10校くらい、しかも各大学に多くても20人くらいしかメンバーはいないそうです。そしてlab mateの一人は今年やっと2、3人で部活を立ち上げて、セミナーに望んでいるそうです。どうやって練習しているかを聞いたら「強豪校に足を運んでいる」とのこと。彼はディベートは日本の一年生ディベーターに毛が生えた程度(英語力を含めても)ですが、会話をすればディベートによく出てくるような話題については精通しています。このことを考えても、個人的にリサーチをする、それをディベートにおいてどう運用するかをラウンド外でも考える、まさに「ディベートをライフスタイルにする」ことが大事なのかな、と感じる機会となりました。
何とも当たり前の結論になってしまいましたが、当たり前の結果を出すためには当たり前の努力だけではダメなようです。当たり前の努力を、かなりの量、しかも相当期間やらなければダメなようです。自分も頑張らなければ…
Kohei Arakawa